日本のVC投資 - パーフェクトストーム

2019年において、日本はCVCが支援するアジアの案件の大半に関与し、域内の他国をリードしていました。 この傾向は今後も相当期間続くものと見込まれます。 ところがこの投稿のタイトルでも暗示されるように、日本は資本は潤沢でもアイデアは不足しています。

アイデアの欠如

2019年に実施されたGEM成人人口調査によると、「起業は賢明なキャリアの選択ですか?」という質問に対して肯定的な回答率で日本はアジアの最低(10%)に位置付けられました。

起業活動の総数では日本は50か国中47位に、「高収入」が条件に加わると33か国32位にランク付けられました。

以下で示すように日本は貯蓄を重んじる伝統的な文化がある一方、独立志向は比較的低い傾向があります。日本の投資家はソフトバンクの孫正義CEOの戦略を模倣することが成功の最善策だと認識しています。 孫氏は日本文化の英雄とあがめられ、海外の新興企業投資に関して大いに称賛されています。 特にアリババへの投資では500万米ドルが600億米ドルに膨れ上がり、日本の投資家が革新的起業を発掘するべく海外に目を向ける先例となりました。

資本余剰

2020年において日本の株式指数TOPIX構成企業の現金余剰率は53%にのぼり、世界の主要市場全体で群を抜いて高い割合を記録しています。 米国の株式指数S&P構成企業の現金余剰率は14%であることを踏まえると、日本企業の経営理念を垣間見ることができます。

やや極端な例ですが、キーエンス株主資本比率は92.9%に達し、収益がなくても17年間営業コストを賄えます(同社の計算に基づく)。 この突出した業績には、製造の大半を国内中小企業に外注するキーエンスの「要塞」型事業スタイルが少なからず貢献しています。 純粋に現金留保だけで会社を20年近く運営するという考えは、日本企業が究極的理想とする経営概念ですが、どの規模の企業にも有効なアプローチというわけではありません。

チャーチルの格言に「より遠くの過去を振り返るほど、より遠くの未来を見渡せる」というものがあります。 日本の投資家はキャッシュの獲得と消費が相容れない概念であるという理解にとらわれすぎている傾向があります。 ここ数十年を振り返ると、かつて世界中の広告塔を飾っていた巨大企業が凋落した多数の例が浮かびます。セガ、シャープ、NECなどの家電大手はイノベーションに乗り遅れ、社内改革に失敗しました。

「出る杭は打たれる」という日本の文化はビジネスの再構築というコンセプトの対極にあります。ミスを毛嫌いし、結果を甘受する文化でCEOが果敢に危険を冒そうとする高リスクの新興企業に資本を投じることも同様に対極にありますが、それこそ日立やパナソニックなどが生き残るために行ったことにほかなりません。 対照的に、NECとセガには指導者と激動の時代の先を見抜く視野が欠けていました。 日本は文化的に変化を嫌いますが、嫌っている余裕はありません。

現状から判断して、日本は投資先を厳選する絶好のチャンスにあり、しかも格安の評価額で取得できると断言できます。 現在の状況は三菱UFJ銀行が前回の金融危機の渦中にモルガンスタンレーに90億米ドルと巨額を投じた時期とよく似ています。当社の推計ではこの投資の評価額は3倍にも達しています。

近い将来貿易戦争が予想されず、地域と経済の安定、投資家との合理的な交渉が見込め、投資先を待つ巨額のキャッシュを抱える将来を見据えた日本企業は、どのような新興企業にとっても最有力「投資家」として無視できません。 日本の眠れる巨人が薄暗い寝台から起き上がり活動の準備を始めるのに、今ほどうってつけのときはありません。